清 水 啓 著
アルミニウム外史
(上巻・下巻)
A5判、上製本、上巻450頁、下巻492頁、1冊定価2,619円(税込)(送料サービス)
いま歴史が面白い!!
1997年以来、『アルトピア』誌上においてまる5年の長きにわたって連載され、大好評のうちにこのほど完結した清水啓氏の力作『アルミニウム外史』が上巻(戦争とアルミニウム)と下巻(北海道のサトウキビ)の2冊の本にまとめられ、このほど発刊されました。
この本はたんに歴史的事実を羅列した書ではありません。今回初めて発掘された極秘資料も含む豊富なデータに基づき、筆者独自の切り口によって鋭く分析したアルミニウム産業論であり、企業経営論です。
過去を知り、現在を判断し、明日を占う。そうした手ががりを得ることのできる書とも言えます。
いま、歴史が面白い。混迷の時代だからこそ、原点に立ち戻って考える必要がありそうです。
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アルミニウム外史 (上巻) 戦争とアルミニウム 目次
第 一 章 アルミニウムが戦争を変えた 1
全金属航空機の登場 1 戦争がアルミニウムの最大顧客 3 第一次世界大戦前後 7
第 二 章 飛行機がなくては戦えぬ 17
戦争のためのアルミニウム 17 世界一のアルミニウム生産 19 総統閣下のアルミニウム 22 国王陛下のスピットファイアー 26 メッサーシュミットの登場 30 ドイツ空軍機の生産革命 31 アルバート・シュペールについて 36 天皇の国の戦う航空機 38 住友アルミニウムの戦い 44
第 三 章 日米総戦力とアルミニウム 49
国家総戦力 49 日本の開戦が英国を救った 50 米国のアルミニウム産業、 全軍需の二五% 52 B29の誕生と天皇の国の敗北 55
第 四 章 戦争はアルコアの独占を止めた 61
米国の戦時物流動員 61 アルミニウムの戦時動員、 アルコアの抵抗 64 アルコア独占の危機 67 アルコア独占の最初の綻び 72 独禁法との長い、 うんざりする戦い 74
第 五 章 アルキャンと戦争 83
欧州からの軍需がアルキャンを大きくした 83 アルコアの誤算 85 国営アルミニウム製錬 86 アルキャンの戦争太り 88 豊富な水力電気が拡張を可能にした 92
第 六 章 日本のアルミニウム産業の出発 95
黎明期のアルミニウム製錬 95 アルミニウム製錬胎動期、 古河の役割 97 日本アルミニウム・シンジケート 100 戦争と国家指導のアルミニウム 102 軽金属統制会、 官の産業間接支配 106 住友とアルミニウム 108 住友とアルコア 111住友のアルミナ生産と製錬への進出 114 住友の垂直統合の失敗 117 統制経済下のアルミニウム 122 重要軍需物資に指定 124 昭和電工のアルミニウム 126 電力事情 129 森コンツェルンか鈴木コンツェルンか 131 森矗昶のアルミナ、 製錬の見切り発車 134 石原産業が森矗昶の窮状を救う 137 新生・昭和電工と森の退陣 140
第 七 章 拡大する日本経済 143
世界的な軍拡競争を反映 143 石原広一郎の回想 146 森廣蔵の果たした役割 152森矗昶の国家観 155
第 八 章 ジュラルミン物語 161
ウィーン世紀末とアルミニウム 161 ツェッペリン伯とアルミニウム骨材 163 飛行船によるロンドン空襲 165 ツェッペリン飛行船とジュラルミン 168 ジュラルミンとアルコア 174 海軍とアルコア 179 アルコア自身のジュラルミン 185シェナンドアー号の成功 192 ジュラルミンの日本での発祥 194 住友伸銅とジュラルミン 196 古河電工とジュラルミン 205 陸海軍の確執 208 リンドバーグがアメリカ国民に与えた勇気 211 リンドバーグの成功がアルコアを変えた 214 アルコアの加工技術 217
第 九 章 外地におけるアルミニウム産業 227
アルミニウム製錬の正統 227 佐々木次郎の証言 229 有森毅と満軽 232 高橋本枝と上島清蔵 233 アルミニウム製錬成功の四条件 235 高橋本枝の製錬哲学 239 日本アルミに見られる資本と経営の分離 241 技術の壁 242 ふたたび高橋本枝と上島清蔵 244
第 十 章 日本軽金属株式会社 249
宝塚とアルミニウム 249 電力国営 252 電力国営について森矗昶の微妙な立場 254 日発の発足と小林の新資本主義 255 小林と古河財閥の握手 258 古河の経営哲学 259 小林一三の商工大臣就任 262 アサハン計画とビンタン計画の発端 263 小林と岸信介の争鳴 264 アサハン計画とビンタン計画の挫折 266
第十一章 満州と朝鮮におけるアルミニウム産業 269
高松宮とアルミニウム 269 満州軽金属のはじまり 270 アルミナの生産原価 274満州軽金属の生産開始 276 ロシア、 日本、 満州そして満鉄 277 宮崎正義と石原莞爾 279 満鉄経済調査会 281 ソ連革命と満州 281 二キ三スケ時代 284 石原莞爾の満州復帰 286 朝鮮は隣邦ではなかった 287 陸海軍の異なる仮想敵国 289 加藤友三郎の良識 290 軍需省統制下のアルミニウム産業 291 アルミニウム産業の最後の拠り所 296 鴨緑江流域の水源 297 世界的水準であった水豊ダム 300 満鉄事件と企画院グループ事件 304
第十二章 戦争が終わって 307
戦争と資本主義 307 第二次大戦はパックス・アメリカーナを確定した 311 戦時余剰財産とアルコア 313 怒り狂うデイヴィス会長 315 アルコアの妥協 318 アルミニウム産業は独占から寡占へ 319 アルミニウム産業の明るい将来と新しいアルコア 320 水差し一杯分のドライ・マティーニとデイヴィス会長 321 日本占領 325 アルミニウム産業と賠償 327 トルーマン政権とマッカーサーの対立 329 初期の賠償政策と占領 331 財閥解体 333 ワシントンと東京の確執にもかかわらず占領政策は実行された 334 東西緊張と占領政策の変化 336 賠償問題の終焉 338 集中排除法の挫折 339 トルーマン大統領の九ヶ条とドッジ・ライン 342 ドッジ・ライン政策下のアルミニウム産業 343 朝鮮戦争前夜 345
第十三章 朝鮮戦争、 世界のアルミニウムを変える 347
仁川上陸作戦と立花金属工業 347 マッカーサー元帥と仁川上陸作戦 349 停戦 352 三八度線の起源 353 朝鮮戦争の発端 357 日本の得たもの 358 産業別に見る 359 日本軽金属の前途を決めた朝鮮戦争 364 米ソ直接対決 368 ジェット機開発の先駆者はドイツと英国 372 ドイツのジェット機技術が米国を助けた 376 ジェット機が特殊合金を生んだ 377 米ソが鎬を削ったドイツのもう一つの技術 381 アルコア技術陣の移動 383 ふたたび朝鮮戦線へ 384 中共軍の介入 385 国家非常事態宣言 387 朝鮮戦争とアルミニウム需要の拡大 388
第十四章 冷戦とアルミニウム 391
アルミニウムの国家買付け 391 寡占の促進 393 ハーベイと日本軽金属、 住友化学 395 ノックス判事判決 397 冷戦とアルミニウム 402 エネルギーの意味するもの 403
第十五章 プロメテウスの火 405
サブジェクト・ツウ (Subject to) 405 東畑精一とアルコア 407 東畑とアルコアの進歩独占 410 中山伊知郎と物価安定 413 二つの十字架 415 プロメテウスの火 420
終 章 嘆きはやまず 423
ヘレン・ミアーズ 423 日本は米国の鏡 424 リットン報告 (V.A.G.R. Lytton Report) 430 秋津野を人のかくれば朝撒きし君が思ほえて嘆きはやまず 433
参考文献 437
アルミニウム外史 (下巻) 北海道のサトウキビ 目次
序 章 1
第 一 章 蘭省の花の時 5
蘭省の花の時 5 甘えの構造 9 須臾(しゅゆ)の栄え 12 有効需要と高度成長を支えた原料 17
第 二 章 一三五度線の頼りになる友朋 21
ビョンド・ディペンデンス 21 キャプテン・クックは豪州を発見したか 28 ポゼション・アイランド 32 豪州メルボルン 35 一九六〇一九六一年、 メルボルン 37
一九六〇一九六一年、 アルコアの革新 (イノベイション) 41 一九四一一九四二年、 メルボルン、 メンジース・ホテル 45 豪州の至福の黄金時代、ミレニアム (Millennium) 48 一九六〇年五月、 東京メルボルン 51 一九六〇年五月一六日〜二二日、 メルボルン、 メンジース・ホテル 58 ミュチュアル・ディペンデンス (相互依存) 61 コマルコと昭和電工のディペンデンシー 68 ソーダーかプリベイクか 70 ふたたびビョンド・ディペンデンス 74
第 三 章 近代への挑戦 81 日本のアルミニウム 81 詩人金子光晴とバトパハ・ボーキサイト 89 シンガポール海峡に沿って 93 アルコアと昭和電工 95 高橋本枝について 100 住友の挑戦 105 近代化と日本の貧しさ 107
第 四 章 ボーキサイト 113
アルミニウムは鉱業製品 113 アルキャン・ギニア・ボーキサイト (一九二〇一九四三年) 115 アルキャン・ギニア・ボーキサイト (一九四四一九五三年) 119 エル・ドラド 122 ド・ゴールの敗北 125 新しい役者ハーベイ登場 132 ギニア・ボーキサイト、 一九六八年以降 134 アルキャン・ジャマイカ 137 IBA (国際ボーキサイト生産連合) 143 トロンベタス 146 ブラジル・ボーキサイトとアルミナ 151
第 五 章 アルミナ生産に起きた革新 153
それは豪州で始まった 153 戦艦大和海上輸送革命臨海工業革命 158 アルミナ工場の革命 162 豪州のアルミナ工場 164 QAL 165 アルコア・オーストラリアAWAC 168 ワースレイ・アルミナ工場レイノルズ 170 ゴウブ・アルミナ工場アルスイス 172 一九七〇年以降にアルミナ産業に起きた革新の総括 177
第 六 章 電力と通貨 181
近代への挑戦と電力 181 電力需要の増大 184 東信電気と森矗昶 187 味の素本舗鈴木商店 189 国家統制が生んだ甘えの構造 193 電力の国営と大和田悌二 195 一九四五年八月二六日の不思議 197 傾斜生産と電力産業 201 バーレン、 エネルギー革命の発祥 204 バンドン会議とOPEC 209 OECDのアルミニウム工業報告書 217 安西正夫 『アルミニウム工業論』 と中島・村津論文 224 ニクソン・ショック 227 通貨危機の背景 229 スミソニアン体制からプラザ合意へ 233 六日の菖蒲 (あやめ) 235
第 七 章 黄金の六〇年代、 その光と影 245
人類、 月に立つ (A man on the moon) 245 ゆたかな社会 (The Affluent Society) 252 エネルギー革命 256 ダムの時代 260 ダムの時代、 カナダ 263 カナダ、 ケマノ計画 (キチマット製錬所) 265 擬似エネルギー革命 (Phony energy revolution) 268
第 八 章 アルコアの一つの黄金時代 275
一九五八年から一九七〇年、 アルコアの役員室 275 黄金時代、 アルコアの成長の位相 277 フランク・マギー 280 マギーと安西正夫、 「ガ」 と 「モ」 の軽重 282 フリッツ・クローズ 284 ジョン・ハーパー 291 クローム・ジョージ 296 そこにある危機 303
第 九 章 糾れ (よじれ) の研究 307
古河と住友 307 中川末吉と古河各社 310 古河商事破綻の顛末 311 中川と重工業化 314 中川と日本アルミニウム株式会社 316 中川の異形と経営哲学 321 中川と日本軽金属 326 戦争が終わって、 日本軽金属の古河ばなれ 328 古河とアルコア 334 古河とアルコアの別離 341 大屋敦、 長井玄蕃頭尚志、 三島由紀夫 344 永井と大屋 348 大屋 敦 352 大屋とアルミニウム 356 住友二つの糾れと小山田裕吉 365 戦後に起きた住友の糾れ 373 教祖の季節 379 古河と住友の合併 385
第 十 章 北海道のサトウキビ 393
北海道のサトウキビ 393 アルミニウムは化学工業に馴染まない 400 容赦なく 405 アルミニウム製錬は鉱業 (Mining Industry) である 414 安西正夫とエンザス 425
第十一章 日本アルミニウム製錬の壊滅 439
壊滅への道、 並木レポート 439 壊滅への道、 並木レポート以後 443 アルミニウム産業の一貫 (垂直統合) とは何か 446 酒田製錬の意義 454 一九六八年レポート、 治者と被治者 459 予知不能 463
終 章 盲人の寓話 469
盲人の寓話 469 寡占 (Oligopoly) への回帰 472
参考文献 477
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